本当にそのカリウム制限は必要なのか?
こんにちは、赤羽もり内科・腎臓内科の院長の森 維久郎です。
今日は、腎臓病の悩みの種であるカリウムについての解説記事を書きます。
よくいただくご相談内容としては以下のようなものがあり、そのような悩みを抱えている方に向けて書いています。
・腎臓病で、カリウムが高いと言われるがよく意味が分からない。
・カリウムが高くて、何を食べれば良いか分からない。
・野菜・果物も駄目と言われて、食べるものがなくなった。
【目次】 |
カリウムとは
カリウムは野菜や果物に含まれるミネラルの1種です。
採血検査で「K」と記載されているのが、カリウムの値です。
カリウムは不足しても、多くても望ましくなく、いずれも心臓の脈のリズムを乱して突然死の原因となることもあります。
腎臓病でカリウムを制限するのはなぜか
先ほどお伝えした通り、カリウムが増えすぎると突然死の危険性が出ます。
健常な人では、カリウムが増えすぎると尿から排泄されますが、腎臓が悪くなると尿から不要なカリウムが出ていくことができません。
そのため、腎臓病の患者さんでは採血で5.5mEq/L以上を越えないようにガイドラインで推奨されています。(ガイドラインについては「日本腎臓学会のガイドライン」のページをご参照ください。)
カリウムを下げる治療
カリウムを貯めないためには、「摂取するカリウムを減らす」か「カリウムを腸から吸収しないようにする薬を飲む」の2種類の方法があります。
カリウムの多い食事を減らす
カリウムがよく含まれる食事として、以下のようなものがあります。
レンコンやカボチャなどの野菜類、バナナなどの果物、干し椎茸、芋類、豆類などがあります。
- レンコン
- バナナ
- カボチャ
- 干しシイタケ
- なつみかん
- メロン
- ほうれんそう
- 春菊
- イモ類(じゃがいも類)
- 肉・魚など
- 大豆
- アボガド など
野菜であれば、茹でこぼしてから食べてもらうなどの工夫をします。
カリウムを減らすためには食事の知識が必要であり、管理栄養士による栄養相談をしながら食事をとっていくことが望ましいです。
ちなみに、当院では野菜・果物を一律に制限するのではなく、影響の大きい以下の4つから制限していき、採血を見ながら少しずつ調整をしていきます。
- 野菜ジュース・ソースなどの液体
- イモ類
- ドライフルーツ
- バナナ
(AJKDというアメリカの腎臓の学会誌を参考に以上の4つの制限から始めるようにしています。英語で良ければこちらをご参照ください。「Plant-Based Diets for Kidney Disease: A Guide for Clinicians」)
一方で葉物などカリウムが比較的カリウムの上昇が起きないこともあるので採血を見ながら、腎臓病の人によって食べて良い果物・野菜として判断することもあります。
カリウムをおさえる薬を飲む
腸でのカリウムの吸収を抑える薬「カリウム吸着薬」を飲むことでカリウムが上がらないようにする治療です。
カリメート、アーガメイトゼリー、ロケルマなどが薬がこれらに当たります。
時折、カリウム吸着薬で便秘など腸の状態が悪くなる方がいらっしゃいますので適宜副作用の確認をします。
本当にカリウムを制限する必要があるのか
腎臓→カリウム制限と一律に制限することがありますが、これは間違っていると当クリニックは考えています。
カリウムは腎臓そのものを障害するわけではなく、低ければ低いほど良いものではありません。
過去の報告でカリウムの値が3.0-4.0mEq/Lの人たちと、4.0-5.0mEq/Lの人たちだと、後者の方が治療成績が良かったという報告もありカリウムを制限しすぎるのも良くないと報告もあります。
あくまで怖いのは、カリウムが高くなりすぎたときの突然死です。
そのため腎臓病であっても、以下のような場合はカリウムを制限する必要はないことが多いです。
- 腎臓病のステージが軽症
- 血液検査でカリウムが上がっていない
- カリウムを上昇する薬を飲んでいない
主治医としっかり相談して制限が必要かを協議しましょう。
カリウムに対する治療の考え方(私見)
よくカリウムに過剰に反応して、野菜・果物を全く食べなったり、カリウムの値を下げすぎる治療をしている症例をよく見かけます。
個人的には、可能な範囲で野菜・果物を制限しないようにすることを推奨しています。
野菜・果物にはカリウムだけでなく体に必要な食物繊維やビタミンが含まれており、これらを制限するのは望ましくありません。
主治医と協力して、血液検査でカリウムの値をみて、個別で野菜・果物の量を決めていくことが望まれます。
当院では便通などに配慮しつつ、カリウム吸着薬を積極的に使用して、野菜・果物を制限しないようにしています。(これは医師によって様々な考え方があります。)
腎臓病の食事の治療であれもだめ、これもだめと言われて何を食べたらよいか分からなくなり、極端な食事療法を行ってしまう患者さんが一定数いらっしゃるためです。
その分食事についてはシンプルに塩分の制限に集中してもらうのが現実的な治療法だと考えています。
遠慮なくご相談ください
腎臓病の診療をしていると、食事の悩みを抱えている患者様が多くいらっしゃいます。
特に腎臓病の食事療法は「あれもダメ、これもダメ」となり「何を食べてよいかがわからない」という声をよくいただきます。
当院では、専門の管理栄養士と一緒になって「何を食べてよいか」を考えていきます。
透析を予防する腎臓内科のクリニックは、まだ数が少ないため当院を受診される患者さんの半数以上は県外から受診されています。
何かご不明な点がございましたら遠慮なくご相談ください。
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