腎臓病に良い食べ物で腎機能の低下を防ぐための3つの基礎知識
こんにちは、透析予防のクリニック、赤羽もり内科・腎臓内科の院長の森 維久郎です。
本日は、腎臓でお悩みの方から一番相談が多い腎臓の食事療法について解説記事を書きます。
腎臓病の食事療法として抑えておくべき基礎知識は、「塩分」、「野菜・果物」、「タンパク質」の3つです。
【目次】
塩分の調整について知ろう
腎臓の食事療法で一番大切なのは、塩分を減らすことです。(当院では塩分に患者さんの8割方の労力を割いてもらっています。)
塩分を減らすことで、以下のような効果が期待できます。
- 血圧を下げる
- 薬がききやすくなる
- 腎臓の障害を抑える
塩分摂取は6g/日以下を目指しましょう。6g/日は日本人の平均的な塩分摂取の半分くらいの量です。
この目標を達成するのは難しく腎臓病の患者さんで10-20%程度しかこの目標を達成できません。
塩分の調整は気合ではなくテクニックで、以下のような工夫をすると良いでしょう。
- 酢の物を好んで召し上がる
- ダシや香辛料を積極的に使う
- 具を増やす など
野菜・果物の調整について知ろう
野菜・果物に含まれるミネラル「カリウム」が腎臓病の患者さんで問題になることがあります。
腎機能が低下すると腎臓からのカリウムの排泄が少なくなり、体に溜まってしまい「高カリウム血症」になります。
高カリウム血症は、突然死の原因となる心臓の不整脈を引き起こす可能性があるので腎臓病の患者さんでは野菜・果物を控えるように言われています。
カリウムを多く含む食事として以下のようなものがあります。
果物
- バナナ
- アボガド
- キウイフルーツ
- さくらんぼ
- メロン
- なつみかん
- もも など
野菜
- いも類全般(里芋、さつまいもなど)
- かぼちゃ
- 白菜
- キャベツ
- なす など
ただし近年この野菜・果物の制限が、腎臓病の患者さんの健康にとって望ましくない状況を生んでいるのではないかという報告も出てきています。
これか私見も入りますが、以下のような患者さんには野菜・果物はしっかり食べてもらうようにしています。(もちろん、状況や採血結果と相談をしながらですが)
- 腎機能低下が重症ではない(eGFR30以上の方)
- 高齢者
- 採血でカリウムの値が高くない
野菜・果物に含まれる食物繊維やビタミンをしっかり食べてほしいという気持ちもあるためです。
それでもカリウムの値がコントロールがつかない場合は、まず「ロケルマ」と呼ばれるカリウムを下げる薬を内服して、それでもコントロールがつかなければ野菜・果物を制限するようにすることもあります。
そして、野菜・果物の中でもカリウムを上げやすいものから制限していきます。
腎臓とカリウムについては詳しくは「本当にそのカリウム制限は必要なのか?」をご確認ください。
~レシピ集はこちら~
タンパク質の調整について知ろう
タンパク質は、体に吸収された後に代謝を受けて最終的に尿素窒素(BUN)になります。
このBUNが以下のメカニズムで腎臓に影響を及ぼします。
- 腎臓の糸球体への負荷
- 代謝性アシドーシス(血液が酸性になる)
- ミネラルの異常 など
そのため、腎機能低下があるときはタンパク制限が推奨されることがあります。
具体的には腎機能の状態に応じて以下のような形で推奨されています。
- CKD stageG3a(eGFR45以上):0.8-1.0g/kg/日
- CKD stageG3b以降(eGFR45以下):0.6-0.8g/kg/日
タンパク質の質については、動物性タンパク、植物性タンパクに分けてメリットを考えていくと良いでしょう。
動物性タンパクはアミノ酸を効率的に体に取り入れることがメリットで、植物性タンパクは野菜・果物にふくまれるビタミン、食物繊維も同時にとることがメリットです。
中にはタンパク質調整食品と呼ばれる食品も販売されています。
一方で、タンパク制限には以下のようなリスクがあります。
- 身体機能への影響
- 食事量の低下
- 他の栄養素でのカロリーの補正の難易度が高い など
ガイドラインにも記載されていますが、我流でのタンパク制限は非常に危険なので必ず管理栄養士、腎臓内科医の指導のもとで行ってください。
これは私見になりますが、タンパク制限はリスクが高い割に、腎機能低下を抑える効果は根拠として限定的と考えています。
そのため当院でもタンパク制限はあまり積極的に行っておらず、その分塩分の調整に集中してもらっています。
タンパク制限はかなり人も選ぶ治療なので、インターネットでの中途半端な情報収集だけで行わないようにしてください。
また、筋肉量を維持するために腎臓リハビリテーションという運動療法を行うことを推奨しています。
我流の食事療法はやっぱりおすすめしません。。。
腎臓病の食事の治療は、腎臓の治療の経験の豊富な医師と管理栄養士のもと行う必要があります。医療機関で行うことは主に以下の内容です。
- 定期的な採血検査・尿検査
- 身体機能のチェック
- 管理栄養士によるカウンセリング など
患者さんの腎機能の状態、採血結果などで食事の内容が変わります。
かなり個別性の出る治療なのでインターネットで情報を拾って、我流で行うことはあまりお勧めしません。
近年、ご高齢の患者さんが過度なタンパク制限を行った結果、フレイルと呼ばれる寝たきりに近い状態になるような事例が多発しています。
学会でも「サルコペニア・フレイルを合併した保存期 CKDの食事療法」というガイドラインが出来るほどのある種の注意喚起がされています。(ガイドラインは日本腎臓内科学会の「日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン」のページから入手できます。)
腎臓病の食事の治療を受けるには
腎臓病の食事の治療は、腎臓内科医と管理栄養士がタッグになって診療を行う医療機関で行うのが望ましいです。
ただし、中々地域に腎臓内科のクリニックがないこともあるので、内科のクリニックでもよいかもしれません。
その場合は管理栄養士の在籍しているクリニックが望ましいです。
もし回りにそのような医療機関が無ければ、関東圏であれば当院をご利用ください。
小さなクリニックではありますが、年間延べ10000人の患者さんを診療しており、管理栄養士4名で栄養指導を年間2400件ほどおこなっております。(当院の腎臓内科の紹介ページはこちら)
さいごに
いかがでしょうか。
腎臓の患者さんでは、食事でお悩みを抱えている方が一番多く、周りに相談できる人が少ないため一人で戦っている患者さんが多くいます。
腎臓の食事療法は「あれもダメ、これもダメ」となりがちですが、食事は一生かかわることなので、我慢をするのではなく「これは食べても大丈夫」と食べるものを見つけていくことが大切だと思います。
当院では腎臓の食事でお悩みの人に向けた、レシピや医学情報をまとめた本「腎臓病とわかったら最初に読む食事の本(無理なく続けられる満足レシピ)」を出版しております。
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