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クレアチニンの基準値は年齢別に異なる?〜eGFRとの関係を専門医が解説〜

[2025.09.24]

こんにちは、赤羽もりクリニックの院長の森 維久郎です。

毎年の健康診断で見かける「クレアチニン」の項目。数値が基準値を少し超え、チェックがついていると「腎臓が悪いのでは?」と心配になる方も多いのではないでしょうか。

しかし、クレアチニンの値は年齢や筋肉量によっても変動するため、数値だけで腎臓の状態を判断するのは注意が必要です。そこで今回は、クレアチニンの基準値と年齢の関係、そして腎機能をより正確に見るために使われる eGFR について解説します。

クレアチニン値を正しく解釈するために大切な視点

クレアチニンの基準値は年齢そのもので変わるわけではありません。体格や筋肉量が多い方・少ない方で同じ数値の意味が変わることもあるため、この数値だけで腎機能を判断すると誤解を招く可能性があります。

そのため、腎機能を正しく評価するには、クレアチニンだけでなく eGFRなど他の検査結果とあわせて総合的に判断することが重要です。

高齢者のクレアチニン値の特徴

高齢者では、以下のような特徴があります。

・筋肉量の減少
加齢とともに筋肉量が減るため、筋肉から生成されるクレアチニンの量そのものが減少します。筋肉量の減少により、腎機能がある程度低下していても血清クレアチニン値はそれほど高くならないケースがあります。

・腎臓のろ過能力の自然な低下
加齢と共に糸球体の数が減る、腎血流量が減る、血管が硬くなるなどの生理的変化が起き、eGFRなどのろ過能力が徐々に低下します。腎臓におけるろ過能力の低下はある程度自然な現象であり、正常範囲の“下限側”に近くなることもあります。

・検査時に影響する体の状態
健康診断などであまり水を飲まない状態での脱水状態や入浴、運動、薬剤などが血清クレアチニン値に影響を与えることがあり、高齢者ではこれらの影響を受けやすいです。

若い人と高齢者のクレアチニン値の違い

若年層・成人中年層と高齢者を比較すると、以下のような違いが一般に見られます。

・若い人は筋肉量が多いため、クレアチニン生成が多く、基準値の“上限”に近くなることがあります。(例えば、20〜30代男性では0.9~1.2 mg/dLあたりでも正常な場合も。)

・高齢者では筋肉量の低下により生成が少なく、クレアチニン値は若い人より低め〜中間帯になることが多いです。同じ腎機能であっても、若年者より血清クレアチニンの上昇が目立たないことがあり、そのためeGFRなどの推定ろ過量が重要視されます。

腎機能を調べるときに使うeGFR

クレアチニン値だけでは腎機能を完全に把握できないため、eGFR(推算糸球体ろ過率)が併用されます。これには年齢・性別・血清クレアチニン値を取り込んだ計算式が使われ、日本では「日本人向けeGFR」の計算式が使われています。

eGFRとは腎臓のろ過能力を示す指標

eGFR(推算糸球体濾過量)は、腎臓が血液をろ過する力を数値化したものです。健康な人の腎臓を「100点満点」としたときに、現在の腎臓が何点かを示すイメージです。

慢性腎臓病(CKD)は次に掲げる2つのいずれか、あるいは両方が

3か月以上持続する場合に診断されます。

①尿検査、画像診断、血液検査、病理検査などで腎障害の存在が明らかであり、特に0.15g/gCr以上の尿たんぱくがある。
②糸球体濾過量(GFR)が60(mL/分/1.73m²)未満に低下している。

 

eGFRの値が60を下回る状態が続くと、慢性腎臓病の可能性が高くなるため、定期的なチェックをしましょう。

eGFRが低下する原因とポイント

複数の理由で eGFR は低下しますが、特に注意すべき原因を以下に挙げます。

・高血圧

腎臓は細かい血管がたくさん集まってできている臓器なので、高血圧が放置されていると臓器が壊れて、腎機能が低下してしまいます。健康診断時、病院で測ると高く出てしまうこともあるので家庭血圧を測り確認することが大切です。

・糖尿病

血糖値が高くなると血液をろ過する働きをしている糸球体に負担がかかり、腎機能が低下してしまいます。糖尿病で血糖が高い状態のまま年単位で放置された結果、腎臓に障害が起きた状態を「糖尿病性腎症」と言います。

糖尿病性腎症はたんぱく尿が出ることが多いため、健康診断などで指摘を受けたら早急に医療機関に受診をしましょう。

血液検査と尿検査でわかる腎臓の状態

腎機能全体を評価するためには、血液検査だけでなく尿検査も非常に重要です。

・血液検査では主に血清クレアチニン値、eGFR、加えて BUN(尿素窒素)、電解質(カリウム・ナトリウムなど)を測定。これにより血液中の老廃物濃度や、腎臓のろ過能力がどれくらい保たれているかが把握できます。
・尿検査では主にタンパク尿(アルブミン尿)血尿、尿沈渣などをチェック。特に「尿たんぱく」が出ると、腎臓がSOSを出しているサインとなります。

尿たんぱくを放置すると、腎臓への負担が増し、eGFRの低下につながる可能性があります。また、検査結果に出る数値は一時的な体調・水分状態・薬の影響などでも変わるので、複数回検査した上で判断することが望ましいです。

参考記事:・クレアチニンの正常値とは?同時に腎機能やeGFRを検査で正しく理解しよう
慢性腎臓病(CKD)はストレスが原因⁉ 今すぐ始める“食事と生活習慣”の見直し術

生活習慣で腎機能を守るには

腎臓は1度悪くなると回復が難しい臓器です。一方で、特別なことをしなくても、日々の生活習慣で腎臓の負担を減らすことが、健康維持につながります。

毎日の食事でできる腎臓ケア

腎臓病と診断されていても、まだ食事制限が必要ない段階の方は、まず偏食せず栄養バランスを意識することが大切です。特定の食品に偏った食事は、将来的に腎機能に負担をかけやすく、高血圧や糖尿病といったリスクを高めます。

主食・主菜・副菜をそろえた食事を心がけ、腎臓にやさしい生活習慣を整えていきましょう。

参考記事:カレーは腎臓病で食べてはいけないもの?食事制限は必要なのかを専門医が解説

激しい運動より、できることを少しずつ

運動制限の指示がない方は運動習慣を作ることも腎臓を守るために効果的です。ウォーキングや軽い筋トレ、ストレッチなどの適度な運動は血流を良くし、腎臓への負担を減らすことにつながります。

具体的には、「買い物に行くときに一駅分歩く」「エレベーターではなく階段を1階分だけ上る」「家事の合間に肩回しやスクワットをする」など、日常生活の中で取り入れられる動きでも十分です。

普段運動習慣がないという方は、「お気に入りの音楽を聴きながら、テレビを見ながら軽くストレッチする」などから始めるのはどうでしょうか。無理な激しい運動は必要ありませんが、毎日少しずつ体を動かす習慣を続けることが大切です。

さいごに

いかがでしたでしょうか?

当記事では「クレアチニンの基準値は年齢別に異なるのか」というテーマを中心に、eGFRとの関係や腎機能評価のポイントについて解説してきました。クレアチニン値は、年齢・性別・筋肉量などによって個人差があり、特に高齢者では数値が見かけ上低くなることもあるため、eGFRなどの複合的な指標での判断が重要になります。

腎機能の状態を正確に知るには、血液検査だけでなく尿検査や生活習慣の見直しも欠かせません。特に高血圧や糖尿病がある方は、早期に腎臓への影響を把握し、適切な予防や治療を行うことが大切です。

なお、赤羽もりクリニックでは、医師と管理栄養士が連携し、腎臓を守るための食事・生活習慣のアドバイスを丁寧に行っています。「検査でeGFRが低いと言われた」「腎臓の数値が気になる」「何を食べたらよいかわからない」といったお悩みがある方は、どうぞお気軽に以下のバナーよりご連絡ください。

参考文献:赤羽もりクリニック監修 医師と管理栄養士が教える腎臓病・糖尿病レシピの教科書

この記事を監修した医師
森 維久郎

赤羽もりクリニック院長、日本腎臓学会腎臓専門医。人工透析を減らす診療をコンセプトに年間1万人以上の外来診察を行う。 情報発信に力を入れており、合計4冊書籍を出版、YouTubeチャンネル「じんぞうの学校」を運営、チャンネル登録者3万人以上。 

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