プロテインは腎臓に悪い?腎臓の専門医の本音
こんにちは。赤羽もりクリニック院長の森 維久郎です。
外来で診察をしていると、患者さんから「プロテインを飲んでも良いのか」という質問をよくいただくので、この記事でまとめてみました。
以下のようなお悩みの方はぜひ最後まで読んでみてください。
- 高齢で体が弱ってきてプロテインを勧められているが、腎臓への影響が心配な方
- 筋トレが好きでプロテインをたくさん飲んでいるが、健康診断で腎機能を指摘されてしまった方
- 健康診断で腎機能について指摘を受け、プロテインが原因ではないかと気になっている方
それではいきましょう。
腎臓とプロテイン ~本当にプロテインは腎臓に悪いのか?~
インターネットやYouTubeなどを見ていると、「プロテインは腎臓に良い」と言う人と「腎臓に悪い」と言う人が混在しているようです。
ぜひ知っておいていただきたいのは、このように多様な意見がある場合、多くはまだ明確な結論が出ていないということです。
今回の「プロテインと腎臓」の関係についても、最終的な結論はまだ出ていません。
つまり、「まだ分かっていない」という事実をまずは受け止めることが大切です。
それを踏まえた上で腎臓専門医である私はプロテインが「腎臓に悪いかどうか」という点については、そこまで悪くはないのではないかと思っています。
ただしプロテインを飲むことで結果的にタンパク質の過剰摂取になってしまえば、腎機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
「タンパク質の過剰摂取は腎機能を悪化させる」ということは、国際腎臓学会であるKDIGO、日本の腎臓学会が発行する診療ガイドラインでもコンセンサスを得られています。
プロテインは健康に悪い? 私がプロテインを勧めない理由
プロテインが腎臓に直接的な悪影響を及ぼす点については、私はそれほど大きな影響はないと考えています。
それにもかかわらず、私が患者さんにプロテインを手放しで勧められない理由として、以下の研究報告が挙げられます。
ハーバード・ヘルス・オンライン(Harvard Health online)に記載されている過去の調査に、「クリーン・レーベル・プロジェクト(Clean Label Project)」というものがあります。(The hidden dangers of protein powders)
このプロジェクトでは、アメリカで市販されている100種類以上のプロテインパウダーを精査し、100種類以上の有害物質が含まれていないかを調査しました。
その結果、多くの製品から重金属などの有害物質が検出されたことが報告されています。
これらは、製造側が意図的に入れたものではなく、原材料の栽培過程や製造プロセスにおいて意図せず混入してしまったものと考えられます。
つまり、消費者も製造者も知らないうちに、有害物質を摂取してしまう可能性があるのです。
人間に必要な1日のタンパク質量を「体重×1g」と仮定しても、通常の食事で十分に摂取可能な範囲です。
そのためタンパク質の補給が必要な虚弱状態にある高齢者や癌の患者さん、ボディービルダーやアスリートの方以外はあえてリスクを冒してまでプロテインを飲む必要ないと考えています。
腎臓が悪い高齢者のプロテイン摂取は決して悪くない
高齢者のプロテイン摂取について 「高齢者はどうなのか」という質問もよく受けます。
ここでは、腎臓が悪い高齢者がプロテインを飲むことについて解説します。
腎機能が悪くなると、身体機能が7割程度まで低下するという報告もあるほど、筋肉が落ちやすくなります。
その結果、「サルコペニア(筋力低下)」や「フレイル(虚弱状態)」に陥りやすくなるのです。
実際に、腎機能が悪い高齢の方には、身体機能が低下しているケースが多く見受けられます。
そのような方については、「タンパク質を制限して腎機能を守ること」よりも、「タンパク質をしっかり摂って身体機能を維持・向上させること」が優先されます。
これは、日本腎臓学会が発行するガイドラインにも同様の記載があります。(日本腎臓学会 サルコペニア・フレイルを合併した 保存期 CKD の食事療法の提言)
つまり、腎機能が悪いご高齢の方で身体機能が落ちている方にとって、十分なタンパク質を摂取することは非常に重要です。
しかし、それを普段の食事だけで補うのは難しいため、補助としてプロテインを飲むことは決して悪くないと考えています。
結局のところ、「治療の目標をどこに置くか」によります。
多くの高齢患者さんの場合、腎機能が低下して人工透析になるリスクよりも、身体機能が低下して寝たきりになるリスクの方が高いと考えられます。
もちろんケースバイケースではありますが、このような場合はプロテインを摂取しても良いと判断します。
「プロテインは腎臓に良いか悪いか」という一律の議論ではなく、個々の状況(ケースバイケース)に応じて、柔軟に考えていく必要があるのです。
ソイプロテインは腎臓に良い
プロテインの種類について最後に、プロテインの種類についての質問にお答えします。
結論から申し上げますと、「プロテインの種類(ホエイやソイなど)を変えることで、腎機能や健康状態の改善が期待できることはない」と考えています。
冒頭でお伝えした通り、プロテインが腎臓に良いか悪いかという結論はまだ出ていません。そ
もそも、特定の食品一つが腎臓にどのような影響を与えるかを長期間にわたって厳密に研究することは非常に難しく、今後も明確な結論が出ないまま経過する可能性が高いでしょう。
一方で、多くのプロテインから有害物質が検出されたという事実は無視できません。
したがって、「プロテインをあえて飲む必要がある方(食事でどうしてもタンパク質が不足する高齢者など)」に限ってはその摂取を肯定しますが、「一般の方が、あえてリスクを負ってまでプロテインを飲む必要はない」という私の考えは、ソイプロテインであっても他のプロテインであっても変わりません。
ソイプロテインは腎臓に良いと伝えているメディアを見かけますが、多くがプロテインメーカーがスポンサーとしてついています。
製薬会社が自社の薬を売っていたら疑う人が多い一方、食品の話になると信じてしまう傾向があると思っています。
そもそも本当に腎臓が悪いのか?
最後に、外来で「プロテインと腎臓」について相談に来られる方に共通している、非常に重要な点をお話しします。
実は、腎機能について調べている方の多くが、「本当は腎臓が悪くないのに、検査数値上、腎臓が悪いと思い込んで悩んでいる」という現状があります。
特に20代〜50代で、筋力トレーニングを習慣にしていて筋肉量が多く、日常的にプロテインを飲んでいる方にこの傾向が強く見られます。
その理由は、一般的な腎機能検査で使われる「クレアチニン」という項目にあります。
クレアチニンは筋肉の代謝産物であるため、筋肉量が多い人ほど数値が高く出やすいという特性があります。
そのため、実際には腎臓がしっかり働いているにもかかわらず、検査結果では「腎機能が低い」と判定されてしまうことがあるのです。
もし心当たりがある場合は、「シスタチンC」という検査を受けることをお勧めします。 この検査項目は筋肉量の影響を受けないため、より正確な腎機能を把握することが可能です。
本来、腎機能というものは、大方高血圧、糖尿病、肥満といった生活習慣病の影響を受けて徐々に低下していくものです。
そうした持病がないにもかかわらず、健康診断などで腎機能の低下を指摘された場合は、まずは「本当に悪いのか」を正しく調べる必要があります。
最後に
いかがでしたでしょうか。
本日は「腎臓とプロテイン」の関係についてお話ししました。
プロテインが直接的に腎機能を悪くするかどうかは、現時点ではまだ解明されていません。
一方で、多くのプロテイン製品に重金属などの有害物質が含まれているリスクがあるという報告もあります。
そのため、食事でどうしてもタンパク質が不足する方以外には、積極的におすすめしないというのが現状の私の考えです。
また、プロテインと腎臓について調べている方の中には、実際には腎機能が悪くないにもかかわらず、検査数値で悩んでいる方が多くいらっしゃいます。
当院では、シスタチンCを用いた精密検査を含め、本当に腎機能に問題があるのかどうかの診断を行っております。
また、管理栄養士による栄養相談も受け付けております。ご不安な点があれば、ぜひ以下のバナーから当院の紹介ページをご覧いただき、お気軽にご相談ください。
参考文献:赤羽もりクリニック監修 医師と管理栄養士が教える腎臓病・糖尿病レシピの教科書
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