糖尿病の治療で使用する薬の役割と副作用について解説
こんにちは、赤羽もり内科・腎臓内科の院長の森 維久郎です。
糖尿病の薬の治療について書きました。
糖尿病と診断され薬を出されたけど、これ本当に飲む必要あるの?と思った方や、糖尿病の薬が怖いという方などに読んでほしい記事です。
(当記事は院長の森医師が監修しています。)
目次
糖尿病で薬を飲まないとどうなるのか
糖尿病で薬を飲まなくても血糖値が高すぎる場合を除き、短期的には自覚症状としては何も起きません。
ただし長期的には血糖値が高い状態が持続することで、年単位で全身の血管や臓器を少しずつ障害し重大な合併症を引き起こします。
重大な合併症は心筋梗塞、脳梗塞、失明、人工透析、足の切断などを指し、健康寿命を大きく下げるため糖尿病はしっかりコントロールする必要があります。
糖尿病をコントロールする方法として薬を使用しますが、食事療法や運動療法のみでコントロールすることが出来るときもあります。
参考
糖尿病で薬を飲む数値
糖尿病の状態によって薬を使うか使わないかを適宜判断します。
糖尿病の評価としてヘモグロビンA1cという値を参考にして、当院では以下のような対応を取っています。
ヘモグロビンA1c 7.0%以下の場合
まずは食事や運動を中心とした生活習慣の改善をして、HbA1c7.0%以下の状態が維持できるようであれば薬を使用しないこともあります。
ヘモグロビンA1c 7.0-8.0%の場合
まずは食事や運動を中心とした生活習慣の改善をして、HbA1c7.0%以下を目指します。
特に肥満の方や生活が乱れている方は生活習慣の改善のみでコントロールできることがあります。
患者さんの要望に合わせて薬を使用することもあれば、薬を使用せずに管理栄養士さんとタッグを組んで治療することもあります。
ヘモグロビンA1c 8.0%以上の場合
まずは薬を使用して、血糖値を落ち着かせます。
その後、ダイエットや生活習慣の是正を行い、良好なコントロールが得られた場合は休薬することもあります。
参考
糖尿病の薬の副作用 ~低血糖など~
糖尿病の薬には様々な種類のものがあり副作用はそれぞれ異なります。
多くの糖尿病の薬において共通するのが、低血糖に注意が必要ということです。
滅多に起きませんが、重症な低血糖の場合、意識を失ったり、死に至ることもあるでしっかり知識を入れておきましょう。
低血糖の症状
低血糖になると以下のような症状がでます。
- 発汗
- 動悸
- 脈がはやい
- 手が震える
- おなかが減る
- 顔面が白くなる
- 意識が朦朧とする
- 異常行動がでる
- けいれん など
低血糖の原因
低血糖の原因として、以下のようなものがあります。
・食事が不規則
・くすりの飲み間違い
・激しい運動をしているときや運動後
・飲酒 など
SU剤と呼ばれる糖尿病の薬(アマリール、グリミクロンなど)を使用している方、インスリン注射を使用している方は特に注意が必要です。
低血糖の治療
低血糖になった場合は、速やかに糖分を接種して頂く必要があります。
SU剤やインスリンを使用している患者様は、症状が出たときのためにブドウ糖を日頃から持参頂くと良いでしょう。
尚、αGI阻害薬と呼ばれる糖の吸収を抑える薬を飲んでいる方は、糖分を吸収しても中々吸収されないため、ジュースなどよりブドウ糖が特に望ましいです。
糖尿病の薬を飲むときの注意点 ~シックデイとは~
糖尿病の薬を飲むときの注意点として体調が悪いときにどうするかについてがあります。
シックデイとは
糖尿病の方で感染症などの病気になったりしてご飯が食べれてない、などの体調のすぐれない日をシックデイと呼びます。
シックデイになると、食事での糖分摂取がないため低血糖になったり、逆に感染症の影響でインスリンが効きづらく高血糖になることがあります。
そのため、糖尿病の方がシックデイになった時の家庭での対応を「シックデイルール」として決めておく必要があります。
シックデイの対応
糖尿病の状態や、使っている薬によって、ルールが異なるので内服薬やインスリンを使用している場合は事前に主治医と協議をしておくと良いでしょう。
まずしっかり安静にして、水分・炭水化物をしっかりとり、体温などをはかり現状把握をすることが大切です。
薬ごとのシックデイの対応の一例として以下のようなものがあります。
- ビグアナイド薬、SGLT-2阻害薬、SU剤、グリニド剤:中止する。
糖尿病の薬で痩せるって本当?
糖尿病の薬の中でSGLT2阻害薬やGLP1受容体作動薬と呼ばれる薬は、体重を減らす効果があります。
SGLT2阻害薬は尿から糖分を出す効果があり400kcalを体の外に出すため体重が減ります。
ただし食欲が増えやすいので食べる量がコントロールしきれない場合は体重が増える場合もあります。
GLP1製剤は食欲を落とす効果があり、体重減少を期待できます。
ただし胃をムカつき、吐き気などが出る方が一定数いらっしゃいます。
色々ある糖尿病のお薬の種類
糖尿病のお薬は色々なものがあり、一長一短で患者さんによって使い分けをします。
この記事では当院で良く使う薬について触れたいと思います。
ビグアナイド
糖尿病の薬でまず最初に検討する薬で、薬の名前としてメトグルコ、メトホルミンと呼ばれるお薬です。
糖尿病の治療でアメリカでは第一選択となる薬で、長い歴史があり効果も証明されています。
肝臓での糖の生成を抑えるのが一番の働きですが、腸での糖の吸収の効果や、インスリンを効きやすくする効果も期待できます。
また、過剰な食欲を減らし、体重を増やさずに血糖値を下げることが可能です。
比較的安全性の高い薬ですが、不適切な使用法によりまれに乳酸アシドーシスという合併症や、強い倦怠感、吐き気、下痢、筋肉痛などの症状がでることがあります。(下痢が頻度の高い副症状ですが、軽症のものが多く数週間で改善してくることが多いです。)
余談ですが、最近はアンチエイジングの世界でも注目されているようです。
SGLT2阻害薬
近年注目を集めており、ヨーロッパやアメリカなどでは症例によって最初に使うことが推奨されているお薬です。
尿から糖を排泄することで、血糖をコントロールします。
心臓や腎臓などに良い影響を与えたり、体重を減らす効果が期待されています。
副作用としては、稀ですが尿に出る血糖が、まれに膀胱炎などの尿路感染症を引き起こしたり、脱水を起こす可能性があります。
そのためSGLT-2阻害薬を飲んでいるときは、しっかり水を飲みましょう。
薬の名前として以下のようなものがあります。
- スーグラ
- フォシーガ
- ジャディアンス
- カナグル
- ルセフィ
- アプルウェイ など
DDP-4阻害薬
日本では一番使われている糖尿病の薬です。
血糖値が高い時だけインスリンの分泌を促進するため、理論上低血糖を起こさないのが特徴です。
薬の名前として以下のようなものがあります。
- グラクティブ
- ジャヌビア
- エクア
- ネシーナ
- トラゼンタ
- テネリア
- スイニー
- オングリザ
- ザファテック
- マリゼブ など
GLP-1受容体作動薬
糖尿病の中でも体重減少効果が期待されている薬です。
今まで注射薬しかありませんでしたが、2021年2月に内服薬でも使われるようになり大変注目を集めています。
肥満の糖尿病の患者さんにはぜひ使用したい薬です。
薬の名前として以下のようなものがあります。
内服薬
- リベルサス
注射薬
- トルリシティ
- ビクトーザ
- リキスミア
- オゼンピック など
最後に
いかがでしたでしょうか?
お医者さんから糖尿病でお薬が必要と言われてこの記事を読んでいる方も多くいらっしゃると思います。
薬となると副作用のことが気になるお気持ちも分かりますが、薬によっては血糖を下げるだけでなく心臓を守ったり、体重を減らす効果が期待できます。
- このお薬で合っているんだろうか?
- 本当にこの薬不要なのではないか?
など色々不安になることも多いと思います。当院でそのような患者様のお悩みの相談も受け付けております。
お気軽にご相談ください。
また当院では、食事療法や運動療法、ダイエットなどの生活習慣の改善で薬を減らしていけるような取り組みを行っています。
自分で色々調べるよりも、一度専門家に相談してアドバイスをもらい、日々の生活の中で実践することを推奨します。
webより、診察のご予約を受け付けております。
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