腎臓病の基本知識:ステージ、原因、検査 - 専門医が徹底解説
こんにちは、赤羽もりクリニックの院長の森 維久郎です。
この記事を読まれている方には、健康診断などで腎臓病と言われドキッとして、ネットで色々検査してこちらのページに辿りついた方が多いのではないかと思います。
腎臓は私たちの体にとって非常に重要な器官であり、私たちの生命を支えています。
それは血液を浄化し、体内の余分な水分や老廃物を排出する役割を果たしています。
しかし、腎臓が適切に機能しなくなると、これらの役割が果たせなくなり、体全体に影響を及ぼします。
この記事を通じて、腎臓病の基本的な知識、原因、そして検査方法について理解を深めていただければ幸いです。
病気は知識と理解をすることで不安がとれる側面もあります。
それではいきましょう。
(尚、当記事では腎臓病の中でも慢性腎臓病についてお話をしていきます。)
【目次】
腎臓病とは
腎臓病は、腎臓が本来果たすべき機能が低下し、体内の老廃物や余分な水分の排出が困難になる病気を指します。
慢性腎臓病の特徴は長期間にわたり進行し、完全には治らないケースが多いことです。
現在、日本の成人の8人に1人は慢性腎臓病と言われている新たな国民病と言われています。
腎臓病の定義
慢性腎臓病の定義は腎機能が低下した状態が3か月以上持続していることです。
腎機能低下というのは、主に以下の3つを指します。
- 腎機能の仕事の量に異常がある状態
- 腎機能の仕事の質に異常がある状態
- 腎機能の形や細胞レベルの異常がある状態
これらの検査異常が3か月以上続いていると慢性腎臓病と診断されます。
腎臓病の症状・進行
腎臓病には重症化するまで症状がないことが多いです。
逆に症状が出たときにはかなり悪くなっている可能性があるため症状が出ていない段階の治療が必要です。(詳しくは「腎臓病の初期症状をチェックしよう ~この症状って腎臓??~」のページをご確認ください。)
そのため、腎臓病と指摘された時は腎臓病の進行度合いを知ることが大切で、簡単に調べることができます。
次の章で詳しくやっていきましょう。
腎臓病のステージ
腎臓病は、その進行度によりさまざまなステージに分けられます。
それぞれのステージにより生活や予後に及ぼす影響が異なり、自分の状況を深く理解することで対策を正しくたてることができます。
腎臓病のステージと分け方
まずはステージを分ける作業を一緒にやりましょう。
ここは少し難しいかもしれませんが、必ず理解する必要がありますので頑張ってついてきてください。
腎臓病は、「eGFR」は腎臓の仕事量を示す血液検査項目を使い、良い方から順にG1.G2.G3a.G3b.G4.G5とステージ分けをします。(上の図縦軸に相当します。)
- GFRが90以上 →G1
- 60以上~90未満 →G2
- 45以上~60未満 →G3a
- 30以上~45未満 →G3b
- 15以上~30未満 →G4
- 15未満 →G5
6つのステージに分けられます。
eGFRが低ければ低いほど(上の図では下に行けば行くほど)重症です。
G3aより悪くなると腎臓病と診断され、G5になると人工透析の準備が必要になります。
今ご自身がどこにいるかを確認しましょう。
あれ横軸はいいんですか?と思われた方は鋭いです。
ちょっと混乱する可能性があるので省略しましたが非常に重要なので余裕があれば理解してみましょう。
横軸では「タンパク尿」と呼ばれる腎臓のSOSの役割を示す尿検査項目で3つ(A1、A2、A3)に分けます。
タンパク尿が出ているほど将来的に腎臓が悪くなると考えらえています。
つまり正確には上の図では右下に行けば行くほど)重症です。
このように血液検査の「eGFR」と尿検査「タンパク尿」を組み合わせて腎臓病のステージをつけていきます。
各ステージごとの対応策と予後
各ステージにはそれぞれ異なる対応策が必要です。
ステージ1と2では、生活習慣の改善と定期的な検査が大切です。
ステージ3bと4では専門医の治療が必要となり、食事療法や薬物療法が行われます。
ステージ5では透析治療や腎臓移植が選択肢となります。
予後は腎臓病の原因や年齢により様々ですが、早期発見と適切な治療が生存率を大きく左右します。
それぞれのステージで必要な対応を理解し、自身の健康を守るための最善の行動をとりましょう。
腎臓病の原因・病気
腎機能低下の原因は多岐にわたりますが、主に5つのパターンに分けることができます。
- 糖尿病による腎機能低下
- 高血圧による腎機能低下
- 免疫や遺伝性の病気によるもの
- 腎臓の形態学的な異常によるもの
- その他
これらのパターンに属しているかによって予後や行うべき治療が異なります。
言い換えると、腎臓病には原因によって様々なタイプの腎臓病があり、タイプごとに治療が異なります。
腎臓病だからいきなり食事を制限したりするのではなく、まず原因を特定しましょう。
① 糖尿病による腎機能低下=糖尿病性腎症
糖尿病性腎症は、糖尿病の長期的な影響で腎臓がダメージを受け、腎機能が低下する病気です。
日本人で人工透析が必要になる方の約半分弱が糖尿病性腎症が原因で透析になります。
進行が非常に早く、合併症も多く起きるのが特徴です。
治療は糖尿病、高血圧の治療を中心に行いますが、合併症が起きている場合は高度な治療が必要になることもあります。
食事療法が非常に効果的です。
糖尿病がありタンパク尿が出ている場合は糖尿病性腎症の中でもかなり進行している可能性があるでこの場合は必ず専門医の治療をうけましょう。
② 高血圧による腎機能低下=腎硬化症
腎硬化症は、動脈硬化の長期的な影響で腎臓がダメージを受け、腎機能が低下する病気です。
高血圧だけでなく、タバコ、加齢など様々な原因が動脈硬化が起こします。
進行は比較的ゆっくりですが、高齢化とともに腎硬化症が原因で透析に至る患者さんがここ数年増えています。
治療は高血圧の治療を中心に行います。
人によって食事制限を中心とした食事療法を行わない方が良いことも多いので注意が必要です。
③ 免疫や遺伝性の病気によるもの
IgA腎症という免疫の病気や多発性嚢胞腎という遺伝の病気で腎臓がダメージを受けるパターンです。
病気によりますが、尿検査で血液成分を認めたり、画像検査で腎臓に水に固まりがあり精密検査を行って見つかることが多いです。
非常に稀な病気で高度な知識が必要になるので専門医のもとで診断をうけると良いです。
それぞれの病気によって、治療法は異なります。
食事療法というよりはそれぞれの病気の治療を優先されます。
④ 腎臓の形態学的な異常によるもの
腎臓の形に異常があり腎機能が正常な箇所が減ることによって全体的に腎機能低下が減ります。
例えば以下のような場合が当てはまります。
- 腎臓が一つしかない
- 腎臓がうまれつき小さい
- 腎機能が腫れている など
診断は腎臓エコーを行うことで行います。
治療は時と場合によりますが、これ以上腎臓を悪くしないために高血圧、糖尿病にならないなどの取り組みを行うことが多いです。
⑤ その他
その他、薬やサプリメントで腎臓が悪くなるなど多岐に渡る原因があります。
最近では肥満、睡眠不足、ストレス、歯周病も腎機能低下につながる可能性があるという報告も出ています。
腎臓病と言われたら行うべき検査
① もう一度同じ検査をする
健康診断で腎臓病と言われたら、まず行うべき検査はもう一度同じ検査をすることです。
血液検査と尿検査です。
理由、腎臓の異常が3か月持続しているかを確認するためです。
健康診断の時にたまたま脱水傾向で一過性に腎機能低下がわるくなった可能性もあります。
この場合は検査を行いもとに戻っていたら特に問題はありません。
② ステージを知る
さきほどお伝えした通り、腎臓病と言われたらまず自分の腎機能の状態を把握してステージを調べましょう。
そのために
- 血液検査(eGFR)
- 尿検査(タンパク尿)
を行いましょう。
タンパク尿に関しては健康診断で行われる簡易検査ではなく、詳しくグラムで調べる「タンパク尿定量検査」や「尿中アルブミン」を調べると良いでしょう。
また腎臓専門のクリニックでは、シスタチンCと呼ばれる違う血液検査項目も調べるのが一般的です。(詳しくは「シスタチンCとは?検査を行う理由と検査方法」をご確認ください。)
更に自費でもいいので徹底的に調べたいという方はFGF23と呼ばれる血液検査項目を調べることも可能ですが基本はここまでやらなくても良いです。(詳しくは「FGF23」をご確認ください。)
③ 腎臓病の原因を知る
腎臓病の原因は1つだけで起きているわけではなく、複数の原因が複合的に関わっていることが多いです。
どの原因が関わっているかを調べるためは専門医による問診、画像検査・生理検査を一通り行うことが望ましいです。
当院では以下のようなものを行います。
- 腎臓エコー
- 頸動脈エコー
- 血圧脈波検査
- Inbody検査 など
腎臓の形だけでなく、全身の動脈硬化の状態や、腎臓病の合併症である筋力低下の状態などを把握することが望ましいでしょう。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
腎臓病の基本的な知識、その原因、そして検査方法について見てきました。
腎臓病は医療関係者からしても理解が難しい病気で、中々理解が難しい所があったかもしれません。
腎臓病は早期に発見し、適切な治療を行うことで予後が大きく改善されます。
まずは知識と理解から始めることで自分自身の健康を守ることができます。
ただし記事を読んで分かったと思いますが、予後や行うべき治療はそれぞれの人によって異なります。
当院では専門的な血液検査や尿検査を行い、病態に応じて適切な治療を提案しております。
専門外来ではどのような診療を行うかにご興味がある方などは以下のページをご覧になってください。
~この記事を書いた人~
森 維久郎
日本腎臓学会腎臓専門医
外来診察 年間1万人以上
書籍 合計4冊出版 合計2万部以上
YouTubeチャンネル「じんぞうの学校」登録者数17000人以上
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