腎臓リハビリテーションとは?効果やリハビリをおすすめする方について解説
こんにちは、赤羽もりクリニックの院長の森 維久郎です。
ほんの10年前までは、腎臓病の患者さんは運動をしてはいけないと言われていました。
ところが、ここ数年で腎臓病の患者さんで運動をしたところ良い成績が出るようになり、積極的に運動をしていきましょうという流れになってきています。
今日は、近年注目されている腎臓の運動療法「腎臓リハビリテーション」についての解説記事を書きます。
【目次】
腎臓リハビリテーションとは
腎臓リハビリテーションは、運動・食事・精神的などの包括的なサポートをするプログラムのことを指し、腎臓病の患者さんの生命予後やQOLなどを改善させます。
腎臓リハビリテーションという公式な学会があり、腎臓リハビリテーション指導士と呼ばれる公式な資格があります。
現在、保険適用が限定的なため、提供している医療機関はわずかですが、今後注目されている腎臓の治療です。
腎臓リハビリテーションの効果
腎臓リハビリテーションには大きく
- 身体機能の向上
- 心臓・脳への保護効果
- 腎臓の保護効果の可能性
の3つの効果が期待できます。
腎臓病の患者さんは身体機能が健康な人に比べて7割になっているという報告もあり、フレイルと呼ばれる寝たきり状態になることが課題になっています。
また腎臓病の患者さんは心臓・脳の病気になる可能性が健康な人に比べて数倍になるという報告があります。
以上2つの課題に対して、運動が注目されています。
加えて、近年腎臓リハビリテーションを行ったところ腎機能が改善したという報告もあり、腎保護の可能性として期待されています。
腎臓リハビリテーションをした方がよい人
腎臓病の患者さんの大半は、腎臓リハビリテーションをお勧めします。
ただし、透析導入直前の患者さん(eGFR<15)や、重度の糖尿病、足の血流が悪い人など、腎臓リハビリテーションをすることでデメリットがメリットを上回る方もいらっしゃいます。
主治医としっかり協議したうえでやる必要があります。
腎臓リハビリテーションを行う前の検査
腎臓リハビリテーションを行うには、腎臓内科の主治医に可否をしっかり確認した上で、運動の専門家である理学療法士、作業療法士と相談をしたうえで行いましょう。
また腎臓リハビリテーションを行う前に合併症を防ぐために以下の検査を安全性を確認する必要があると言われています。
- 血液検査
- 尿検査
- 心電図
- 胸部レントゲン
- 血圧脈波検査
- (心臓病があれば)心臓エコー
- (糖尿病があれば)眼底検査、神経伝導検査 など
腎臓リハビリテーションの内容
ストレッチ、有酸素運動、「レジスタンス運動」と呼ばれる簡単な筋肉トレーニングの3種類を中心に行います。
ストレッチ
柔軟体操は、身体の柔軟性を高めるだけでなく、動かしている各部位周囲の血行を促進させます。
一般的なストレッチを週2-3日で行うのが望ましく、日常で空いている時間にストレッチをすることが望ましいです。
有酸素運動
有酸素運動とは、水泳、サイクリング、ウォーキングなどの運動の、筋肉を使うときのエネルギーで酸素を使う運動です。
心地よく息が切れる程度の負荷の負荷で、ある程度の時間をかけながら行います。
有酸素運動によって、全身の筋肉が酸素とエネルギーを使用することで基礎代謝の向上や心肺機能の向上が期待できます。
個人の体力によって、強度・頻度を決めていきますが、腎臓リハビリテーションガイドラインでは「1回につき20-60分、1日あたり1-2回、週3-5日程度の頻度」で行うことを推奨しています。
種目はどのようなものでよく、当院では、患者さんの好きな種目を決めてやって頂いています。
レジスタンス運動
レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動で、スクワットや筋力トレーニングなどの運動のことです。
個人の体力によって、強度・頻度を決めていきますが、腎臓リハビリテーションガイドラインでは「1セットで15回程行える負荷で、各種目1セット、週2-3日の頻度」から始めることを推奨しています。
徐々に体力がついてきたら、セット数、負荷の量を増やしていきます。
当院ではバーベルなどの負荷の強い機材は使用せず、自分の体重やゴムバンドなどで負荷をかけるトレーニングをおすすめします。
具体的な腎臓リハビリテーションの動画
当院では独自のプログラムを作成してyoutubeで動画を配信しておりますのでご参照ください。
準備体操
身体機能が低下してくると、若い頃は運動することに抵抗がなかった方でも体を動かすのが億劫になりがちです。
まずは、簡単に家でも手軽にできる準備体操からはじめていきましょう。こちらの準備運動は、椅子を使って5分程度の短時間で手軽に行えるプログラムを紹介しています。
日々の生活のちょっとした隙間時間に実施できますので継続しやすく、体を動かすことに慣れてもらうことを目的にしています。
それでは、早速はじめていきましょう。
上肢の軽い体操とストレッチ
ストレッチと軽い運動を組み合わせることで、身体の各関節の柔軟性を高めるだけでなく、動かしている各部位周囲の血行を促進させます。
このビデオでは、頸のストレッチと肩・肩甲骨の軽い運動をし、頸から肩にかけてほぐしていきます。
そして、身体の中心(体幹)もゆっくりとストレッチし、更に腰回りの筋肉まで伸ばしていきます。
下肢の軽い体操とストレッチ
こちらのビデオでは、下肢の軽い体操とストレッチをおこなっていきます。
主に、股関節や膝関節、足の関節のストレッチを十分実施することで、各関節の痛みを和らげたり動かしやすくします。
特に、変形性膝関節症の方や足の筋力が低下し、バランスを崩しやすい方は膝関節と足首の関節をストレッチし、軽い運動をしていきましょう。
足の筋肉を積極的に動かすことで、足だけでなく身体全体の血液の循環を促進しますので、足のだるさやむくみにも良い効果があります。
寝ながら行うストレッチ
このビデオでは、全身を伸ばすバンザイ運動や足の各部位のストレッチをゆっくりと時間をかけておこないます。
運動を習慣化したいけど、あまり運動をする気分にならない時や、体の調子がすぐれないため動きたくない時に、手軽に寝た状態でストレッチをするだけでも効果があります。
寝ながらのストレッチは、ビデオを視聴しながら同じようにストレッチするだけ。
その日の体調により、運動方法を選択して運動を習慣化していきましょう。
レジスタンス運動
レジスタンス運動とは、筋力トレーニングのことです。レジスタンス運動を行うことで、筋力量を増やして、筋力をつけることができます。
た、筋持久力を向上させると怪我をしにくい身体になります。
基礎代謝が向上することで、痩せやすく太りにくなりますので、体重管理もしやすくなるメリットがあります。
レジスタンス運動の頻度は、週に2〜3回行なうことを目標に実施していきましょう。
上肢のセラバンド体操
セラバンドを使用した運動は、何通りもある筋力トレーニングの中でも筋肉を部分的に強化するという点で理想的な方法です。
セラバンドの負荷を選ぶことができ、鍛えたい部位によって負荷の変更が可能です。
ゴムバンドを使用していますので、筋肉を痛めにくいというのが特徴です。
こちらのビデオでは、主に上半身の各部位の筋力を強化する運動をおこなっています。上肢を様々な方向に動かすことによって鍛えられる筋肉の部位が変わります。
下肢のセラバンド体操
セラバンドを使用した下肢の筋肉トレーニングです。まずは、股関節周囲筋を鍛えます。
股関節周囲筋を強化することで、転倒予防や歩行が安定しやすくなります。
次に、膝関節を伸ばす運動をし、太ももの前面の筋肉アップしましょう。
立った状態で最も使用する重要な部位の筋肉ですので、しっかりと鍛えていきましょう。
はじめのうちは、運動回数が少なくても良いですので、徐々に実施回数を増やしていき下肢筋肉のアップをしていきましょう。
当院での診療の流れ
当院では、腎臓リハビリテーション指導士・作業療法士が在籍しており、定期的に外来を行っております。
腎臓リハビリテーションをご希望の方はまず医師による診療・検査を行い、検査結果を受けて腎臓リハビリテーションをマンツーマンでおこないます。
① 医師の診察
まずは医師の診察を受けて頂き、腎臓の評価を中心に採血・採尿・生理学的検査などを行います。
評価を行った上で、腎臓リハビリテーション外来の予約をとらせて頂きます。
② 運動療法士の診察
理学療法士・作業療法士による診察をします。
まずは、運動についての説明、身体機能の評価をさせて頂きます。
必要に応じて筋力測定(握力・膝伸展力など)、運動能力のチェックをします。
評価をおこなった後、患者さんに合わせて、有酸素運動、簡単な筋力トレーニングを提案させて頂きます。
基本プランとしては、数か月に1日当院に受診して頂き、プランを作成して自宅で行えるリハビリテーションを行います。
こちらの運動療法士の診療は自費診療(30分4980円)で行っております。
③ 管理栄養士による栄養指導
運動療法は、食事療法とセットで行うことでより効果が期待できますので当院では推奨しております。
当院では管理栄養士が在籍しており定期的に食事の相談を受けることが可能です。
④ 数ヶ月〜1年後
適宜相談しながら、プログラムの期間を決めて、終了後に再び身体機能の評価を行います。
腎臓病についての情報を配信しています。
いかがでしたでしょうか?
当院では以下のメディアで腎臓病でお悩みの方向けの情報を配信しております。
当院が診察の場で患者さんにお伝えしている内容を盛り込んでいますので是非一度ご覧になってください。
~この記事を書いた人~
森 維久郎
日本腎臓学会腎臓専門医
外来診察 年間1万人以上
書籍 合計4冊出版 合計2万部以上
YouTubeチャンネル「じんぞうの学校」登録者数17000人以上
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