フォシーガってどんな薬?腎臓病に効果的?医師が解説します。
こんにちは、赤羽もり内科・腎臓内科の院長の森 維久郎です。
患者さんから腎臓病の治療として注目を集めているフォシーガという薬についてご相談を頂くことが多くなってきたので触れたいと思います。
NHKで最新の腎臓病の治療として特集されたお薬で、実際、腎臓専門医の間でもここ数年で一番注目を集めたお薬の一つだと思います。
ただし、一部の報道機関が効果をあまりに誇張したがために、一度整理してお話をしたいと思います。それではいきましょう。
*尚、フォシーガはSGLT2阻害薬と呼ばれるお薬の一つです。フォシーガが格段に有名なので薬剤名を挙げていますがこの記事の内容はSGLT2阻害薬全体を示しています。
フォシーガってどんなお薬?他の薬と何が違うの?
フォシーガは、SGLT-2阻害薬という糖尿病の薬の一種です。
SGLT-2阻害薬は尿から余分な糖分を排泄する作用して、血糖値の調整をおこなう薬です。
通常血液の糖分は、腎臓の糸球体(しきゅうたい)と呼ばれる身体の必要なものと、不要なものを振り分けるフィルターを通過して、尿として排泄され、尿細管(にょうさいかん)という場所で再び吸収されます。
SGLT-2阻害薬はこの尿細管での糖の吸収を抑えて、そのまま尿の一緒に糖分を排泄するようにします。
このメカニズムにより血糖を調整するだけでなく以下の効果が期待され、糖尿病の薬としてここ数年で注目されているお薬です。
- 体重を減らす
- 腎臓を守る(後で詳しく触れます。)
- 心臓を守る
- 貧血を改善する など
フォシーガの服用方法は?
フォシーガは飲み薬です。
1日1回食事後に服用するだけで良いので、比較的利便性は高いですね。
フォシーガ錠は5mgと10mgがあり、必要性や用途に応じて量を調整していきます。
フォシーガの副反応は?
フォシーガの副反応は以下のようなものがあります。
- 脱水
- 尿の感染症
- 性器の感染症
- 低血糖 など
いずれも頻度は少ないものですが、対策としてフォシーガを服用するときは、しっかり水をしっかり飲んでください。
また、ご飯やお水が飲めないような病気になった時(=シックデイの時)は、低血糖や脱水になるリスクが増えるので休薬して医師に相談してください。
フォシーガが腎臓に良いって本当?
フォシーガは糖尿病の治療薬として使われていましたが、血糖値を下げるだけでなく腎機能を保護する効果も期待され、糖尿病の患者さんには積極的に使用されていました。
2020年にこの腎臓を保護する効果は糖尿病じゃない腎臓病の患者さんにも効果があるという報告が出て、2021年9月より日本で糖尿病がない腎臓病にも保険適用が通り、医療機関から処方することが可能となりました。
ただし、フォシーガの腎保護効果について明らかになっていることと、明らかになっていないことがあり、積極的に使用したい場合とそうではない場合を筆者の主観で以下のように分けてみました。
積極的に使用したい場合(筆者の主観)
以下のような場合は、積極的に検討しても良いと思います。
- 糖尿病がある場合
- 尿蛋白が出ている場合
- 心不全がある場合
- IgA腎症がある場合
- 高血圧、貧血、脂質異常症、高尿酸血症がある場合 など
そうでない場合(筆者の主観)
以下のような場合は、どの程度効果があるかはまだ不透明です。今後の報告内容と照らし合わせてこの記事でも適宜アップデートしていきます。
- eGFRが15以下の場合
- 筋力が低下している高齢者の場合 など
また2022年に日本腎臓学会からSGLT2阻害薬をどのように使うかの基準となる推奨文が出されています。
フォシーガに限らずどのお薬もメリット・デメリットがあり、それらを天秤にかけて判断していく必要があります。
病態や飲んでいるお薬から腎機能を逆に悪くするリスクもあるため、これらの判断は時に専門医が行った方が良いもあります
最後に
いかがでしたでしょうか?
フォシーガにより腎臓病の治療は格段に進歩したと考えており、当院でも積極的に使用しております。
一方で一時期新聞などの報道であたかも魔法の薬のように言われ、患者さんの中には混乱される方も多いお薬でした。
繰り返しますが、使った方が良さそうな場合とそうでない場合があるお薬なため一度専門家と相談されることを推奨します。
当院では以下のメディアで腎臓病でお悩みの方向けの情報を配信しております。
当院が診察の場で患者さんにお伝えしている内容を盛り込んでいますので是非一度ご覧になってください。
当院の腎臓内科について以下をご覧ください。
参考
- CKD 治療における SGLT2 阻害薬の適正使⽤に関する recommendation
- Dapagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease N Engl J Med. 2020 Oct 8;383(15):1436-1446.
- The dapagliflozin and prevention of adverse outcomes in chronic kidney disease (DAPA-CKD) trial: baseline characteristics
~この記事を書いた人~
森 維久郎
日本腎臓学会腎臓専門医
外来診察 年間1万人以上
書籍 合計4冊出版 合計2万部以上
YouTubeチャンネル「じんぞうの学校」登録者数17000人以上
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